10 対談「ひろしの部屋」

笑説「ハイムのひろば」は、いよいよ山場に差し掛かる場面が近づいてまいりましたが、ここで読者の皆さんに一息入れていただきたいと思います。HBSハイム放送スタッフが総力を挙げて企画しました番組をお届けします。今までにないものを提供しようと考えに考え抜いて出来上がったものです。それではどうぞお楽しみください。
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久米島「みなさんこんばんは。司会の久米島ひろしです。今日から始まりました新番組・対談『ひろしの部屋』です。記念すべき第一回にお招きしましたのは、最近、ウェブサイト「ハイムのひろば」に連載が始まったばかりの「笑説・ハイムのひろば」の作家、蓬城 新さんです。それではご登場いただきましょう。」

久米島「ようこそ、当番組へいらっしゃいました。久米島と申します。今日はよろしくお願いします」

蓬城 「よろしくお願いします」

久米島「さて、蓬城さん。のっけからこう言っては失礼かもしれませんが、髪はボサボサ、髭ぼうぼうでまさに作家然とした風貌をされているのですが、日頃からあまり外見は気にされない方なのですか?それとも何か理由があってのことなんですか?」

蓬城 「さすが久米島さん、聞きしにまさる厳しいツッコミですね。昔、TBSでも頑張っておられましたが、その切れ味は未だに劣えていませんね。

いえね、世の中には書物が溢れていますが、書き下ろすということはそれほど簡単ではないんです。フィクションだからと言っていい加減なことを書くと信用されません。例えば誰も経験のない未来のことを書くにもそれなりの理論的裏付けも必要なんですね。そのために何倍もの本を読んで下調べという作業がどうしても必要になるんです。ついつい机に縛り付けられたような生活になってしまいますので、自分の身なりのことなどに神経が回らなくなるんです」

久米島「なるほどそうでしょうね。よくわかりました。そういえば、歴代の有名作家の風貌を見てもボサボサの髪を手で掻きあげている姿の写真が多いですね。納得です」

蓬城 「『掻きあげる』が『書き上げる』に通じてよろしいんじゃないでしょうか」

久米島「おやおや、いきなりダジャレですか?そういえば、笑説「ハイムのひろば」の中でも、あちこちでダジャレのようなものが出てくるようですが、あれは蓬城さんのキャラクターなんですか?」

蓬城 「私は、関西育ちでして、子供のころから落語や漫才が大好きで、テレビのなかった頃ラジオにかじりついて寄席番組を聴いていました。小学校の頃に『寿限無』も覚えましたよ。寿限無寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末 食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ……」

久米島「ちょっとちょっと、蓬城さん。いつまでやるんですか?今やらなくてもいいんですよ。なるほど、時々出てくるツッコミも大阪弁が多いような気がしていました。ところで、関西はどちらのご出身なんですか?」

蓬城 「はい。私は、和歌山県新宮市、熊野三山のひとつで有名な速玉大社のある町で生まれ育ちました。小さな町で全国的にはあまり知られていないかもしれませんが、風光明媚で魚も美味しい、いいところですよ」

久米島「蓬城 新というお名前も少し変わっていると思いますが、それは本名ですか?それともペンネームなんですか?」

蓬城 「はい、これはペンネームでして、実は、私が新宮市で過ごした間に通った小学校、中学校、高校の校名の頭文字を一文字ずつ並べたものなんです。つまり、”蓬”莱小学校、”城”南中学校、”新”宮高校から一字ずつ取ったものです」

久米島「なるほど、それにしては、見事に名前らしいものになっていますね。偶然とはいえ、いいお名前ですね」

蓬城 「『蓬城(ほうじょう)』は『豊穣』にも通じて我ながらいい名前だと思っています。紀伊半島の南部は、山々が直ぐに海に面しており平野が少ない地形なんです。漁業は昔から盛んですが、コメなどの主要農作物よりも野菜やミカンなどの果樹の栽培が盛んです。その意味で「豊穣」という言葉は地元の人の日頃の大きな願いに通じます」

久米島「おやおや、ダジャレだけかと思いきや今度は少し真面目な話に繋がりましたね。ところで、蓬城さん、どうして作家になろうと思われたのですか?」

蓬城 「それはですね、わが町から偉大な作家が出ているからなんです。その代表は、川端康成とともに芥川賞の選考委員を第一回から務めた佐藤春夫です。ただ知る人ぞ知るで、残念なのは、知名度という点では思ったほど高くないんですね。川端康成がノーベル賞を受賞したために世界的に有名になりましたが、実力では佐藤春夫の方がはるかに上だという研究者がいます。(同郷出身者の贔屓目ではありません)

また、あの若き日の瀬戸内寂聴が新潮同人雑誌賞を受賞した時の裏話に、他の選考委員の意見を遮り佐藤春夫が一人で決めて押し通したという裏話が残っています。この時、最初に瀬戸内の作品を読んだだけで決めてしまい、他の候補作品を読まなかったそうです。ですから、瀬戸内は後に出した『女子大生・曲愛玲』の中で佐藤先生には頭が上がらないと言っています。

一方で、太宰治は薬物中毒で借金が増え、賞欲しさに当時の実力者であった佐藤春夫に何度も懇願の手紙を出していますが、とうとう受賞できませんでした。少し前にも、今まで公表されていなかった手紙が家族の手で新たに発見され、2年ほど前に新宮市の佐藤春夫記念館で公開されたばかりです」

久米島「なるほど、そんな偉大な作家が生まれ育った町のご出身なら当然そういう思いになることは理解できます」
「では、蓬城さん、笑説『ハイムのひろば』の主人公の西野敏彦というキャラクターはどのような経緯で登場させたのですか?」

蓬城 「そうですね、キャラクターを作った理由を聞かれるとちょっと困ったことになるんですが、まあ、言ってみれば私自身の分身のような存在でしょうか。この笑説を書き始めてから作家などと呼ばれていますが、実はそんな大した力もないですし、言わば遊び半分で書き始めたものなんです

久米島「分身ということになると、作品は自叙伝的なものということになりますか?」

蓬城「そうですね。一部そのような部分もあります。昔から言われる私小説というのはどのような定義になっていますか。誰が決めて何が正解なんでしょうか。作家というのは、事実を書いてもいいし、空想を書いてもいいものならその境目はどこにあるのか本人しかわかりませんよね」

久米島「ちょっとお待ちください。今ネットで調べてみますから……はい出ました。Wikipediaによると『私小説とは、日本の近代小説に見られた、作者が直接に経験したことがらを素材にして、ほぼそのまま書かれた小説をさす用語である』となっていますね」

蓬城「なるほど、しかしそんなに単純なものでしょうか?田山花袋の「蒲団」を私小説の始まりとする説が有力ですが、平野謙は、近松秋江の「疑惑」と木村荘太の「牽引」を、私小説が確立した時期だとしています。これらが多く自己暴露的性質を持っていたのに対し、志賀直哉の『和解』のような作風を「私小説」と呼び、客観描写ではなく、対象を見た著者の内面を描く事を主眼としています」

久米島「流石ですね。実は私は、車が大好きで車のことならだれにも負けないくらい詳しいと自負していますが文学はあまり得意ではありませんのでよくわかりません」

蓬城「ご謙遜を。天下の超有名ニュースキャスターとして知られる久米島さんがそんなことはないでしょう」

久米島「”ギャラン”にもなく、文学を真面目に語ることなど到底無理です。キャスター時代には超真面目に政治や経済を語っていた”セリカ”、特別なイメージがついてしまったんです。そんな自分とは違うイメージはもう捨ててもいい”コロナ”と思っています」

蓬城「おっと!出ましたね!さすがは言葉のプロ。嫌いじゃありませんよ私も。ご遠慮なく、ジャガ・”ジャガー”どうぞ!」

久米島「大変失礼をば致しました。品のあるハイムの住民の方からお叱りを受けるといけませんのでダジャレはこれくらいにしておきましょう」

蓬城「せっかくですから、故郷から出た有名作家の私小説を紹介させてください。まず、佐藤春夫の「田園の憂鬱」そして、戦後生まれで初めての芥川賞作家・中上健次の「岬」「枯木灘」も私小説と言われています。でも、郷土が生んだ誇るべき偉大な二人の作家の話になると、道端の雑草にしかすぎぬ私のことなどお話しする気にはとてもなれません。この話はこれまでにしましょう」

久米島「承知いたしました。それでは話題を変えることにいたしましょう。蓬城さん、今後、この「笑説・ハイムのひろば」の展開はどのようになっていくのでしょうか?その辺をお聞かせいただければありがたいのですが」

蓬城「そうですね。今後も基本は変わりません。あくまでも、西野が経験した事実に沿いながらもそこに空想という枝葉をつけながらということになると思います。ただ、できるだけ楽しんでいただけるように住民の皆さんの一部の方がご存じの方と似たキャラクターはできるだけ登場していただこうかなと思っています。もちろんフィクションなので書いたことを事実だと誤解されないようにお願いしておきたいですが」

久米島「ありがとうございます。今後の展開についてのヒントも伺いましたので、『笑説・ハイムのひろば』にますます興味がわいてまいりました。みなさんも大いに期待されていいのではないでしょうか。」

”トゥルー・トゥルー!”…………”トゥルー・トゥルー!”

久米島「あ、電話です!ちょっとすいません!」(放送中に何で電話やねん!)

久米島「・・・うん、うん。わかった。了解!」

蓬城 「久米島さん、今、放送中ですよ!プライベートな電話って!どうなっているんですか?訳わかませんよね!」

久米島「いえね、蓬城さん。家内からでして、緊急連絡なんです。家内がね、スーパーに行ったらトイレットペーパーが売り切れちゃってひとつも残ってないらしいんです!それで、帰りにこの近くのスーパーに寄って買ってきてほしいという……」

蓬城 「久米島さん、あなた、何を仰っているんですか?今、大事な放送中……」

久米島「ということで、みなさん、本日は、作家の蓬城 新さんをお迎えしてお話を伺いました。お忙しいところ、どうもありがとうございました」

蓬城 「なんじゃこりゃー!」

久米島「それではみなさん、ごきげんよう、司会は、久米島ひろしでした」
………「ひろしでした」……「ひろしでした」……「ひろしでした」……

~つづく~

 

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