データ移行

WordPressには、「エクスポート機能」と「インポート機能」という大変便利なものが備わっている。これは、サーバーの引越しなどを行うときに、移行元からデータをまとめてパソコンに保存し、次に、移行先にインストールされたWordPressにそのデータを取り込む仕組みである。この機能が使えれば、データの移行は非常に簡単に行える。

(お!今日はちょっと真面目な話らしいぞ!)

今回、移行先には、新しくWordPressをインストールしてあるので、インポート機能は問題なく使える。しかし、移行元のWordPressで管理画面にログインできないことでエクスポート機能が使えない。また、画像についてはこのエクスポート機能が使えても全部移行することはできず、大半はFTPで行なわなければならない。いずれにせよ今回は、ファイル移行に時間がかかかるのは致し方ない。

壊れたWordPressと同じフォルダにあるデータを一旦パソコンにダウンロードし、それを今度は新たにインストールしたWordPressのフォルダにアップロードする。2年間蓄積したデータのボリュームは25万ファイルにも及んでいたためこの作業には結構な時間がかかった。この作業によってURLが変わったためリンクエラーも大量に発生したが、これはメンバーの協力でかなり修正できた。

リンクエラーの修復作業を主に手伝ってくれたのは、雛形雅子だった。この人物はみんなから「雅姐さん」と呼ばれ慕われており、実に心根の優しい人なのだ。控えめな性格ながらいつも気遣ってくれて、何かお手伝いできることはありませんかと声を掛けてくれる。それではお願いしますと、時々手のかかる仕事を依頼しても快く引き受けてくれ、地道な仕事を苦もなくこなしてくれるありがたい存在なのである。

このマンションには理事会が年に数回発行する「ハイムだより」という機関紙がある。第1号から始まりすでに100号を超えている。これらをすべて閲覧できるようにリンクを貼ってあるが、これはリニューアル前の旧サイトでもそうなっていた。旧サイトから新サイトに移行するときにも大活躍してくれた一人が雛形雅子だった。今回の引越しがうまくいけばURLがまた変わることで、再び同じ作業が必要になる。また、雛形の言葉に甘えることになるのかと西野は少し複雑な気持ちだ。

ホームページ制作の作業の中には、バナーの制作や記事の掲載など目立つ作業もあれば、リンクの貼り付けやエラーの修正など目立たない作業もある。画面を見て直ぐにわかるものと見ただけではわかりにくいものがある。その意味では、これらの作業は舞台で踊る役者のために照明を当てたり小道具を準備したりする縁の下の力持ち的役割と言えるかもしれない。その役割がとても重要であることは間違いない。そんな地道な役割を厭わずいつも引き受けてくれるのが雛形なのだ。西野はいつもありがたいと思っている。

そんな彼女が最近少し元気がない。風邪をこじらせたり脚に痛みが出たりして体調不良のようである。毎週開いている勉強会には余程のことがない限り出席し、その熱心さには頭が下がる。雛形がもしチームから去ることになったらどうだろう。彼女の性格からすると、自分は大して役にも立てていないし抜けても影響はないだろうと思っているに違いない。しかし、西野の思いは全く違う。編集作業にどれだけ関わっているかよりも精神的バックボーンが大きいと思う。こういう人の存在がこの活動に対するエネルギーになっているのだ。

そんなことを思いながら、FTP転送中の画面をずっと眺めている。FTP(File Transfer Protocol)とは、ネットワーク上でファイル等の転送を行う通信プロトコル=約束事の1つだ。通信プロトコルというのはネットワーク通信をする際の決まり事のことで、通信規約のようなものだと思ってよい。このFTPという通信方法を使用することで、許された権限内で、ファイルをサーバーとPCの間などでやりとりすることができるようになる。

今使っているのは、FTPソフトのひとつで”FFFTP”というもの。画面の左側は、自分のパソコンの領域、右側は契約しているサーバーの領域だ。この画面で片方から他方へファイルをドラッグすることで転送ができる。つまり、左から右へはパソコンからサーバーへのファイルのアップロード、右から左へは、サーバーからパソコンへのダウンロードになる。今、サーバーからパソコンへ、大量のファイルが流れるように移動している最中だ。時々停止することがあり、その時は再開させる必要があるので注意が必要だ。

主にWEBページ公開の時に使用され、作成したHTMLなどファイルをサーバーにアップロードしたり、更新する際にFTPを利用している。FTPサーバーの情報はブラウザソフトでも読み込み可能なので、アップされているHTMLファイルを読み込みながら表示しているのがWEBページなのだ。他にもファイルをFTPサーバーにアップして他のPCでダウンロードしたり、ファイルを共有するときにも使用される。この機能を利用するには、サーバー側のホスト名、ユーザー名、パスワードなどが必要になる。

このFTPについても、リニューアル隊の初心者講座で説明したことがあるが、みな怖がって触りたくないと言う者が多かった。元のハイムのひろばサイトは前述したようにWordPressではなくHPB(ホームページビルダー)で作成されていたため、エクスポート機能は使えなかった。従い、このFTPは必須の技術だったので覚えてもらう必要があったが、時期が少し早すぎたようだ。中級者レベルに相当するものだったかもしれない。

FTP作業はそれなりに時間はかかるが、この作業を避けては通れない。西野は、片手にワイングラスを持ちながらずっとファイルの流れを眺めている。そんな日が何日つづいただろうか……。

(えー!飲みながらやってるんかい?)
(食事以外、テレビも見ない、新聞も見ない、何もしていないので酒でも飲まずにいられないようだ)

~つづく~

蓬城 新

4+